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【書評】ストーリーとしての競争戦略を聴いた(積読解消した)

積読となっていたストーリーとしての競争戦略を自炊オーディオブックで聴きました。

読もうと思ったきっかけはプロダクトマネージャーのオススメの本として紹介されていたからです。でも読みたいと思ったまま積んどくとなっていました。

何しろこの本は分厚いです。500ページを超える分量があり読み終えるまで一苦労でした。

この年末年始を利用して読もうと思っても、なかなか読みすすめられなかったです。


なかなか読み終わらないので Kindle を自炊してオーディオブック化して、ランニング中などスキマ時間に少しずつ聴いてやっと読み終えました。(オーディオブック2倍速で録音したのに9時間30分ありました!?)

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自炊オーディオブック_ストーリーとしての競争戦略

Kindle のオーディオブック化の方法はこちらを参考にしました。 katsumakazuyo.hatenablog.com

読み終えて、めちゃくちゃ面白かったです。もっと早く読んでおけばよかったです。

普段仕事でサービスやアプリをどういった方向性にしていくか検討をしています。この本を読んで、機能や進め方は個々の打ち手となっており、全体としてストーリーに繋がってはなっていなかったことに気づかされました。

目次

第1章 戦略は「ストーリー」
第2章 競争戦略の基本論理
第3章 静止画から動画へ
第4章 始まりはコンセプト
第5章 「キラーパス」を組み込む
第6章 戦略ストーリーを読解する
第7章 戦略ストーリーの「骨法一〇カ条」

静止画ではなく動画にする

ストーリーとしての競争戦略とは、「勝負を決定的に左右するのは戦略の流れと動きである」という思考様式です。将棋や囲碁にしても同じ話で、普通私たちが戦略というときは、意識しているか無意識かは別にしても、個々の打ち手ではなく、打ち手をつなぐ流れ、勝利に向けたストーリーをイメージしているはずです。戦略をストーリーとして捉える思考は、何も新しい話ではなく、素朴なレベルではごく自然な理解です。

個々の戦略だけでは勝てないこと、戦略は繋がってストーリーとして意味あるものになります。(本のなかでは静止画ではなく動画にすると表現されています)

スタバのようなオシャレで落ち着いたカフェは模倣できても、スタバにはなれません。スタバは単にオシャレなカフェではありません。「第三の場所」提供するために居心地のよい場所を提供しています。オシャレであるのはその一部分に過ぎないのです。

他社との違い

・ポジショニング(SP:Strategic Positioning)
・組織能力(OC:Organizational Capability)

SPは「何をやり、何をやらないか」を決めるのがポイントです。経営資源を集中させるためにトレードオフが発生します。

一方でOCとは、「競争に勝つための独自の強み」です。ルーティンや物事のやり方など、他社と違った強み(組織特殊性)をもつことで、競争優位を実現します。

たとえば、トヨタはOCに強みをもつ会社です。SPの観点でいえばトヨタはフルラインナップ車種があり、ポジショニングは全方位です。OCでは組織活動によるカイゼンがあげられます。日々の業務改善自体は一見どの会社でも模倣できそうですが、組織としてカイゼンを模倣することは簡単ではありません。

SPとOCの考え方について、以下がわかりやすかったです。

SPは「何をするか」「何をしないか」という活動の選択にかかわる打ち手ですから、ここではwhatが主要な問題となります。典型的にはSPは「自社で内製するのか外部から調達するのか」というようなトレードオフの選択ですから、whichに対する答えといってもよいでしょう。一方のOCは自社にユニークな「やり方」から生まれる違いですから、戦略のhowを問題にしています。

私はこの本を読むまでSPとOPの違いを明確には意識できていませんでした。

競争優位をどうやって作っていくかについて、普段SPを考えていることばかりだったことに気付かされました。

コンセプト

本質的な顧客価値を突き詰めるとは、「誰が、なぜ喜ぶのか」をリアルにイメージするということです。それは書き直したメモを片手に買い物に出かけるときの久美子さんの憂鬱や、帰ってきて袋を提げて階段を上る苦労、買い物を久美子さんに頼む周囲の人々の心情、こうしたレベルで顧客の問題をリアルにイメージできるかどうかにかかっています。  戦略ストーリーが動画である以上、その起点にある顧客価値も動画で構想されなくてはなりません。その言葉を聞いたときに、ターゲット顧客を主人公にした動画のシーンが見えてくるようなコンセプトでなければ、ストーリーの発火点にはならないのです。一般的なニーズとして「品揃え」や「スピード」を思いつくのは簡単です。現に多くのサービスの企業が提供価値として掲げています。それだけであれば、アスクルはごくありきたりの「オフィスサプライの通販業者」で終わっていたことでしょう。

コンセプトの考え方は顧客のペインを考えること、ジョブ理論の顧客のジョブは何か、などと本質的には同じ話だと思います。これまで読んできた本ではジョブ理論が好きです。「だれの、なんのジョブを片付けたいか」はどんなサービスでも重要ですね。

クリティカルコア

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スターバックスの戦略ストーリー


クリティカルコアとは、

①他のさまざまな構成要素と同時に多くのつながりを持っている
②一見して不合理に見える

一見して不合理だが真実であることについて,「逆説のスタートアップ」という本と本質的には同じことを指していると思います。一見して非合理なので競合他社が模倣しづらいです。


たとえば、スターバックスでは直営方式がクリティカルコアとなっています。

競合他社はフランチャイズの方が店舗数を増やしやすく、かつお金のリスクも少ないので直営方式を選ぶのは非合理となります。ただスターバックスの「第三の場所」というコンセプトを貫いてくためにこの直営方式か効いてくるのです。

直営方式だから、店長が回転率を過度に追いかけなくてよい店舗運営ができる、都心の一等地に進出できるなどができるようになります。直営方式のメリットが「第三の場所」を提供する戦略と紐付いているのです。

目標と戦略

実際の仕事の局面では、目標をきちんと立てていると、あたかも戦略を立てているかのような気になってくるということがよくあります。つまり、「目標を設定する」という仕事が「戦略を立てる」という仕事とすり替わってしまいがちなのです。その結果、戦略がはっきりしないままで終わってしまうというパターンです。今思えば、バブル期にとんでもない拡大路線を突き進んだあげく玉砕してしまった企業には、戦略を突き詰めることなく目標が独り歩きしてしまったというケースが多くありました。

社内で戦略を発表するさいに、今年の目標は売上前年比110%を達成することです。のような戦略と目標とがすり替わったことが発生します。

このような例は見に覚えがあります。目標はあっても、どうやってそれを達成するのか、道筋がないのです。

戦略ストーリーの「骨法一〇箇条」

①エンディングから考える
②「普通の人々」の本性を直視する
③悲観主義で論理を詰める
④物事が起こる順序にこだわる
⑤過去から未来を構想する
⑥失敗を避けようとしない
⑦「賢者の盲点」を衝く
⑧競合他社に対してオープンに構える
⑨抽象化で本質をつかむ
⑩思わず人に話したくなる話をする

どれも重要な話ですが、とくに「⑦「賢者の盲点」を衝く」「⑩思わず人に話したくなる話をする」がハッとさせられました。

まとめ

自分だったらおもしろいストーリーが作り上げられるか? まだまだこれほど素晴らしいストーリーを作り上げられるほどの技量はありません。

本で出てくるのですが、他社の模倣ではなく、自分たちでストーリー/戦略を考えていくことが重要です。

私も頭に汗をかいて考え続けていきたいと思います。

何で積読にしてしまっていたんだろう、今まで読んでいなくてもったいなかったなと思った本でした。

こういった本に出会えるので読書をすることが楽しいです。